「指示されていないから、自分で考えて行動した」
「何も言われていなかったから、経験をもとに判断した」
「結果的には、会社や仕事にとってプラスになる行動だった」
それなのに――。
「勝手なことされると困る」
「そんなこと頼んでないよ」
「なぜそんな判断をしたの?」
「普通は確認するよね?」
と、なぜか上司から、先輩(お局)から責められてしまう。
しかも、具体的な改善点を教えてくれるわけではなく、不機嫌な態度、威圧的な口調、嫌味、難癖のような言葉で返される。
「じゃあ、私はどうすればよかったの?」
そう感じてしまう人もいるのではないでしょうか。
今回は、**「自分で考えて動いたのに怒られる」「自分で考えろと言われたのに、勝手にやるなと責められる」**という状況について、上司の心理と具体的な対処法を考えていきます。
- Q1.なぜ、指示していないくせに「勝手にやった」と怒るのか?
- Q2.「自分より部下が先に考えた」ことが嫌な上司もいる?
- Q3.それって「プライドが高い」ということ?
- Q4.自己肯定感が低い人ほど、ミスを認められないこともあるのか?
- Q5.「指示していないのに、結果が悪かったら責める」上司はどう考えればいい?
- Q6.「自分で考えて動いたのに怒られた」場合、どう対応すればいい?
- Q7.上司のプライドを傷つけないように、持ち上げたほうがいい?
- Q8.相手に「思い直してもらう」ことはできますか?
- Q9.「上司が不機嫌になるから、自分で考えないほうがいい?」
- Q10.では、どういう上司なら「自分で考えて動いた部下」を歓迎する?
- 最後に|「自分で考えて動いたのに怒られた」ときに覚えておきたいこと
Q1.なぜ、指示していないくせに「勝手にやった」と怒るのか?
ー A.「自分の管理外で物事が動いたこと」が脅威になっている可能性がある。ー
もちろん、すべてのケースに当てはまるわけではありません。
しかし、組織心理学では、部下の自発的な行動が、上司にとって「自分の立場や権限が脅かされた」という感覚につながる可能性が研究されています。
特に、
- 部下が自分で判断した
- 上司の指示を待たずに行動した
- 部下の判断が適切だった
- 部下の行動が成果につながった
という状況では、
「部下が勝手に動いた」
という問題だけではなく、
「自分が把握・管理していないところで、部下が適切な判断をした」
ということが心理的な脅威になる場合があります。
研究では、部下の自発的な行動を上司が「自分の地位への脅威」と認識することが、攻撃的な監督行動につながる可能性が検討されています。
つまり、表面的には、
「勝手にやったから怒っている」
ように見えても、心理的には、
「自分がコントロールできていない」
という感覚が関係している可能性があるのです。
Q2.「自分より部下が先に考えた」ことが嫌な上司もいる?
ー A.その可能性は大いにある。ー
ここは非常に興味深いところです。
例えば部下が、
「過去の経験から、この方法のほうが効果があると思いました」
と判断して行動したとします。
その行動が実際に成果につながった場合、本来なら上司としては、
「よく考えてくれたね」
と評価することもできます。
しかし、上司が「自分が組織をコントロールしている」という感覚を強く必要としている場合、
「私が指示していない」
↓
「私が決めていない」
↓
「部下が自分で判断した」
↓
「自分の存在意義や権限が弱くなった?」
という心理的反応が生じる可能性があります。
これは、必ずしも本人が意識しているとは限りません。
「部下に負けたくない」と自覚しているとは限らず、自分でも理由が分からないまま不快感や苛立ちとして表れることも考えられます。
Q3.それって「プライドが高い」ということ?
ー A.一概には言えない。ー
「プライドが高いから」と考えると分かりやすいのですが、心理学的にはもう少し複雑です。
考えられるものとして、
- 権威を維持したい
- 自分の管理能力を否定されたくない
- 自分の立場を脅かされたくない
- 失敗や無知を見せたくない
- 他人から評価されたい
- コントロールできない状況が苦手
などがあります。
そして、興味深いのが、
「自信があるから威圧する」とは限らない
ということです。
むしろ、自分の能力や立場に不安があるからこそ、脅威を感じたときに強く自己防衛する可能性もあります。
そのため、
「あの人は自信満々だから、あんな態度を取るんだ」
と外側だけで判断することはできません。
Q4.自己肯定感が低い人ほど、ミスを認められないこともあるのか?
ー A.その可能性はあります。ー
例えば、
「自分は間違えた」
という事実を、
「自分は能力がない」
と結びつけてしまう人がいます。
すると、ミスを認めることそのものが、自分自身への否定のように感じられてしまいます。
その結果、
「いや、あなたの説明が悪かった」
「そもそも○○だったから」
「私だけが悪いわけではない」
と、自分を守るための説明が増えていくことがあります。
これは、本人が意図的に「嘘をついている」という意味ではありません。
自分の中で起きている不快感を減らすために、無意識に自己防衛的な解釈をしている可能性もあります。
このタイプは、論点をすり替えて会話の決着がグレーの状態、または本質的な解決にならず、
こちらのモヤモヤが消化されず、不信が募っていきます。
Q5.「指示していないのに、結果が悪かったら責める」上司はどう考えればいい?
ー A.「結果」と「プロセス」を分けて考える必要があります。ー
例えば、
「なぜ勝手にやったの?」
という指摘自体には、業務上もっともな理由がある場合もあります。
会社によっては、重要な判断には上司への確認が必要だからです。
問題になるのは、
「事前に必要なルールや判断基準を明確にしていたか」
という点です。
もし、
- 指示がない
- ルールも明確ではない
- 判断基準も共有されていない
- 部下が合理的に判断した
- それなのに後から「なぜそんなことをした」と威圧する
という状態が繰り返されるなら、単なる業務上の注意とは別に考える必要があります。
部下からすると、
「何もしなければ『考えて動け』と言われる」
「考えて動けば『勝手に動くな』と言われる」
というダブルバインドのような状態になってしまいます。
※ダブルバインド(二重拘束)とは、矛盾する2つのメッセージを同時に受け取ることで、受け手が精神的な混乱や強いストレスを感じる状況のことです。
Q6.「自分で考えて動いたのに怒られた」場合、どう対応すればいい?
ー A.「反発する」より、「判断理由を言語化する」のがおすすめ!ー
例えば、
「指示がなかったので勝手にやりました」
ではなく、
「○○という状況だったため、私は△△という判断をしました。過去の○○の経験から、この方法が適切だと考えました。」
と伝えます。
さらに、
「今後、同じようなケースでは事前に確認したほうがよければ、その基準を教えていただけると助かります。」
と付け加える。
これなら、
「私は考えて動いている」
という自律性を保ちながら、
「今後のルールについては上司とすり合わせたい」
という姿勢も示せます。(この姿勢が、今後の付き合い方で自身の守る術になるかもしれません。)
Q7.上司のプライドを傷つけないように、持ち上げたほうがいい?
ー A.「相手を安心させること」と「ご機嫌取り」は分けたほうがいいでしょう。ー
例えば、
「○○さんの方針を踏まえて、こう考えました。」
という言い方は、不要な対立を避けるうえで有効な場合があります。
一方、
「全部○○さんの指示があったからです」
「私には判断できません」
「必ず全部確認します」
と、必要以上に自分の裁量を放棄してしまうのは別問題です。
大切なのは、
「上司の権限を否定しない」ことと、「自分の判断力を否定する」ことを混同しないこと。
自分で考えて行動できることは、組織にとって本来重要な能力です。
Q8.相手に「思い直してもらう」ことはできますか?
ー A.可能性はありますが、相手を変えようとしすぎないことも重要です。ー
人間の内面を外部から直接変えることはできません。
できるのは、
「自分の意図が誤解されにくいコミュニケーションをする」
ことです。
例えば、
「私は○○という意図で動きました。もし判断基準が違うのであれば、今後のために教えていただきたいです。」
と伝える。
この言い方には、
- 反抗していない
- 言い訳だけしていない
- 自分の判断理由は説明できる
- 今後の改善にも前向き
という4つの要素があります。
上司が合理的な人であれば、ここから認識が変わる可能性があります。
ただし、何度説明しても威圧・人格否定・責任転嫁が続く場合は、「自分の伝え方が悪いから」と考えすぎないことも大切です。
Q9.「上司が不機嫌になるから、自分で考えないほうがいい?」
ー A.それは別問題です。ー
むしろ、
「怒られないために何も考えない」
という状態になると、組織にとっても本人にとっても望ましくありません。
上司の反応を恐れて、
- 提案しなくなる
- 改善案を出さなくなる
- 問題を発見しても黙る
- 指示されるまで動かない
という状態になると、従業員の発言や提案が抑制される可能性があります。
「怒られないための仕事」に変わってしまうからです。
Q10.では、どういう上司なら「自分で考えて動いた部下」を歓迎する?
ー A.「裁量」と「責任」の境界を明確にする上司です。ー
例えば、
「ここまでは自分で判断していい」
「ここから先は必ず相談してほしい」
というルールを明確にする。
そして、部下が判断したときには、
「その判断に至った理由は?」
と確認する。
結果が悪かったとしても、
「次はどう改善する?」
とプロセスを振り返る。
こうしたマネジメントなら、部下は「怒られないため」ではなく、より良い判断をするために考えることができます。
最後に|「自分で考えて動いたのに怒られた」ときに覚えておきたいこと
自分で考えて行動した結果、上司から否定された。
そんな経験をすると、
「私が勝手だったのかな?」
「余計なことをしたのかな?」
「もう自分で考えないほうがいいのかな?」
と、自分自身を疑いたくなるかもしれません。
でも、
「自分で考えて行動したこと」と「組織のルールに従うこと」は、本来両立できます。
大切なのは、
なぜその判断をしたのかを説明できること。
そして、
どこまで自分で判断してよいのかを明確にすること。
です。
もし上司から具体的な改善点ではなく、威圧・嫌味・人格否定などが繰り返されるのであれば、それは「自分の判断力が悪い」という問題だけではありません。
「上司がなぜそのような反応をするのか」を考えることと同時に、
「自分はどうすれば不必要に傷つかず、自分の仕事を守れるか」
という視点も持っておきたいものです。
上司の心理を理解することは、上司の行動を正当化することではありません。
相手の心理を知ることで、
「自分が悪いから怒られている」
という一方向の捉え方から少し距離を置き、
「この人は、こういう状況を脅威として受け取る傾向があるのかもしれない」
と、一歩引いて状況を見ることができます。
それだけでも、必要以上に自分を責めなくて済むかもしれません。


